研究概要 |
前年度までに、多検体T-RFLPデータのピークパターンの比較による各ピークのアラインメントと相関係数行列を用いた菌種推定と構成比の計算を行なったが、今年度は主にMonte-Carlo法による菌種構成比の計算方法の確立を目指した。多検体ピークパターンから相関係数行列を基に菌種推定を行なうのは、類似の測定結果が多数あるときに計算速度の向上に威力を発揮するが、類似度の小さい解析結果が多数あるときには必ずしも有効とはいえない。そこで、ランダム・アルゴリズムで近似値を推定する計算方法を導入して、ピーク変化の類似度に依存しない菌種推定と割合の計算を試みた。その結果、口腔内細菌の細菌叢の菌種の割合を妥当な範囲で推定し、さらにその値に基づいて3人の唾液中の細菌を一日の異なる時間に採取し、75サンプルを本法で解析したところ、それぞれのサンプルを個人に帰属させることができた(Microb.Ecol.60:364,2010)。また別の42サンプルにそれぞれ固有のタグ配列を末端に付加したのち、pyrosequence法で検体由来の16S rRNAの塩基配列を決定した。タグ配列を含む有効な31450配列が得られた。この結果をT-RFLP解析の妥当性の検証、解析の高速化に活用する。現在、口腔内および腸内細菌の16S rRNAデータベースの構築と、多数の検体に対応できる解析システムの準備を進めているところである。
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