低レベルの炎症が肥満に関連することが注目されてきており、歯周病もその候補と考えられている。近年、脂肪組織は単なるエネルギーの貯蔵器官ではなく、さまざまな活性物質が放出される内分泌器官として認識されつつあり、これらの脂肪組織から分泌される活性物質は、アディポカインと呼ばれ、様々な免疫・炎症調節作用を持つことが解明されつつある。我々は、すでに疫学調査において歯周病による炎症とアディポカインの1つであるレジスチンとの関連を報告している。そのメカニズムとして、歯周病由来因子によるマクロファージや単球などに対する刺激によりレジスチンレベルが上昇することを推測した。そのため、単球系細胞株であるTHP-1やU937をPMA添加によりマクロファージ化した状態で、Porphyromonas gingivalis由来LPSによる刺激後、細胞上清中レジスチンレベルをELISAにて、またmRNAレベルをRT-PCR法にて解析したところ、わずかではあるがレジスチン産生とmRNAレベルの上昇を認めた。また、健常人から得た血液より単球と好中球を分離し、各々にPorphyromonas gingivalis由来LPSにより刺激したところ、好中球において、より高いレジスチンレベルを認めたため、そのシグナル伝達経路を解析した。TLR2抗体による前処置によるレジスチン産生への影響は非常に小さかった。一方、CD14およびCD18抗体による前処置によるレジスチン産生は有意に減少したことから、好中球におけるレジスチン産生とTLR4/CD14およびインテグリンとの関連が示唆された。さらに、細胞内シグナル伝達経路について解析するため、PI3K抑制剤であるFY294002およびMAPK抑制剤であるSB203580の前処理により、レジスチン産生の抑制を認めたことから、これらとの関連も示唆された。好中球から放出される因子として他にエラスターゼやラクトフェリン、MMP-9などがすでに報告されているが、これらとの比較もすすめており、歯周病が肥満およびメタボリックシンドロrムへの関与のメカニズムの一端を解明できると考えられる。
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