臨床的に味覚を捉えるには、従来の検査法のように味覚受容器を単独で調べるのではなく、咀嚼運動と組み合わせた味覚検査方法を探索する必要がある。本研究は臨床で簡便かつ高い信頼性を有する味覚検査法を検討し実用化することが目的である。 長崎大学倫理委員会に承認を得て、ボランティアの協力によりデータ採取を行った。初年度の寒天を用いた味覚検査法の味質濃度・硬さおよび容量の検討結果を踏まえて、昨年度は最適な味質濃度、テクスチャー特性、形態の調整条件を絞り込んだ。本年度はさらに寒天の詳細な条件を決定するため、実験およびアンケート調査を行いデータ採取した。 材料はデータ解析より数種の寒天のうち伊那寒天「S-5」が味覚検査に適していた。また味覚検査に最も適していたテクスチャー特性値は硬さ192.6g(破折した時の応力)、粘弾性4.8mm(破折までの距離)であった。形状はドーム型・ダイヤ型に比してキューブ型の方が同一濃度での味覚強度が強い傾向が見られた。昨年度の適切な容量の検討結果から絞り込まれた容量2.0mlと3.0mlの比較を行ったところ、甘味に関しては容量による味覚強度の違いは観察されず、塩味は2.0mlより3.0mlの方が味覚強度が強くなる傾向が見られた。 テクスチャー・形状・容量により味覚強度に違いが観察され、他の口腔内感覚・咀嚼との関連が明らかとなった。よって味覚障害の実態をより正確に把握するためには物性を考慮した味覚検査法の有用性が示され、臨床応用へ繋ぐ結果が得られた。
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