研究概要 |
平成22年度までに、本研究課題において口腔上皮におけるneutral endopeptidase(NEP)の抗炎症反応の役割を解明するため、ヒト培養口腔ケラチノサイト(hOMK)におけるNEPと神経ペプチドで炎症関連因子の一つであるsubstance P(SP)、同じく炎症関連因子の一つであるinterleuikin-1β(IL-1β)との関連について検証を行い、hOMK上のNEPはSP及びIL-1βを制御し抗炎症作用を有している可能性があることを報告した。23年度の研究では、endopeptidaseの一つであるendothelin-converting enzyme-1(ECE-1)の抗炎症作用について検証を行い,NEPの抗炎症作用に対する影響について検証を行った。 本研究ではhOMKを用いて,炎症誘発因子(NicotineとLPS),または炎症誘発因子に加えNEP・ECE-1活性阻害剤(Phosphoramidon)とNEP特異的阻害剤(Thiorphan)を添加し,hOMKのNEP酵素活性と,培養上清中に産生されたECE-1によって生成されたendothelin-1(ET-1)濃度,そして炎症因子であるSP及びIL-1β濃度をELISA法にて各々測定し比較検討を行った.その結果、NEP酵素活性は,Phosphoramidon及びThiorphan添加時にNEP酵素活性の減少が認められた.一方,ECE-1活性に影響されるET-1濃度はThiorphanを添加した場合には減少は認められず,Phosphoramidonを添加した場合に有意に減少した.また,培養上清中のSP濃度は,PhosphoramidonとThiorphanの添加時においては,それぞれが単独で添加された場合に比べて増加する傾向にあり,同様にIL-1β濃度も,PhosphoramidonとThiorphanの添加時においては,それぞれ単独で添加した場合に比べてより増大する傾向にあった. 本研究の結果より,NEPは口腔ケラチノサイトにおいて,細胞から産生されるSP及びIL-1βの産生量を制御することが示された.また,ECE-1はhOMKにおいて,NEPと協働で炎症因子を制御し,抗炎症作用を有している可能性が示唆された。
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