研究概要 |
本年度は,昨年度同様に「蛍光消光現象」を利用したQP(Quenching Probe)法によりSNPタイピングを行い,性別判定およびABO式血液遺伝子型とRhD遺伝子の同時判定を試みた.【試料】性別判定に用いた試料は,室温で5~25年間保存された32歯から抽出した歯髄DNAを用いた.また,ABO式血液遺伝子型とRhD遺伝子の同時判定法に用いた試料は,血清学的に判定された血液から作製された血痕26例(1996年~2008年:Rhd3例を含む)を用いた。【方法】性別判定を行う為に性染色体アメロゲニン領域に位置するX・Y特異的primerおよびQprobeを,また,ABO式遺伝子型検査には261番塩基の欠失と703番塩基の置換をそれぞれを識別するprimerとQprobeを,さらにRhD遺伝子検査ではエクソン3に位置する380番と383番塩基の置換を識別するprimerとQprobeを作製した.反応溶液はLightCycler480 Genotyping Master液にUracil-DNA Glycosylaseを添加し作製した.DNA増幅・解析装置はリアルタイム定量PCR解析システムMx3000Pを用いた.PCR条件は,95℃・10分行った後,95℃・10秒,62℃・40秒,72℃・10秒を50サイクル行い,融解曲線を作成し解析した.【結果・考察】作製後5~25年経過した血痕試料について,QP法による性別,ABO式血液遺伝子型およびRhD遺伝子の判定は可能であった.性別判定では,LAMP法.SMAP法に比べて多少PCR反応時間を要するものの,プライマーの数が少なくて済み,両法に認められた非特異的反応は観察されなかったことから判定精度は高いと思われた.なお,ABO式血液遺伝子型とRhD遺伝子の同時検査法の報告は見当たらず.今回,同時判定を可能としたことは,法医鑑識上,有用性は高いと思われる.本研究の成果については,日本DNA多型学会第19回学術集会および第32回日本法医学会学術中部地方集会において発表した.
|