研究概要 |
本年度は,昨年度同様に「蛍光消光現象」を利用したQP(Quenching Probe)法によりSNPタイピングを行い,ABO式血.液遺伝子型と性別判定(前者)およびRHCE遺伝子に由来するC,c,Eおよびe抗原遺伝子型検査に,昨年度報告したRhD遺伝子型検査(後者)との同時判定を試みた.【試料】試料は,室温で5~25年間保存された32歯から抽出した歯髄DNAを用いた.【方法】前者におけるABO式血液遺伝子型検査に用いたプライマーおよびプローブは、261番塩基の欠失と796番塩基の置換それぞれを識別するプライマーとQprobeを,性別判定のためのX・Y特異的プライマーとX特異的Qprobeを用いて同時判定を行った.また,後者のRHCEに由来するC,c,Eおよびe抗原遺伝子の判定に用いたプライマーは,Tanakaら(Tanaka M et al : Jpn JLeg Med51,32-38,1997)のプライマーを用い,それぞれにQprobeを作製し,Rh-CcD,Rh-EDおよびRh-eDの同時判定を行った.反応溶液はLightCycler480Genotyping Master液にUracil-DNA Glycosylaseを添加し作製した.DNA増幅・解析装置はリアルタイム定量PCR解析システムMx3000Pを用いた.前者のPCR条件は,95℃・10分行った後,95℃・10秒,62℃・40秒,72℃・10秒を50サイクル,後者ではアニーリングを69℃・20秒とし40サイクル行ったのち,両者とも融解曲線を作成し解析した.【結果・考察】今回用いたすべての試料において,QP法によるABO式血液遺伝子型と性別判定の同時判定およびRh遺伝子検査のうちRh-CcD,Rh-EDおよびRh-eDの同時判定を可能とした. 本法はリアルタイムPCR法を応用しており,従来行われていたスラブゲル平板法による作業が必要ないことから迅速・簡便であり,さらにはABO式血液遺伝子型と性別判定の同時検査の報告は見当たらないことから,法医鑑識上,有用性は高いと思われる、本研究の成果については,日本DNA多型学会第20回学術集会および第95次日本法医学会学術全国集会において発表した.
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