研究最終年度として、最終的に構築した評価システムにより、要介護者や顎間固定術実施患者を対象とし実際にサルコペニアの把握が可能かを検証した。また、前年度に継続して介護予防に向けてサルコペニアを抑止し、摂食機能を保持する観点から、口腔体操ならびに唾液腺マッサージによる血行促進効果を把握できるかについても、要介護高齢者および附属病院入院患者を対象として検証した。 今年度に得られた主な研究実績は以下のようである。 1、片側麻痺など廃用萎縮傾向のある高齢者6名を対象とした健常側と麻痺側間の比較 口腔体操ならびに唾液腺マッサージによる血行促進効果を比較したところ、全員で終了時の麻痺側の体温が低温となっており、有意差は認められなかったが約1℃の差が生じた理由としてサルコペニアを含む身体組織的変化が生じている可能性が示唆された。 2、顎間固定患者の固定解放前後の比較 外科矯正手術後に顎間固定を実施した患者12名について、固定期間に筋肉組織の減少が生じたとの仮説により術前からの継続的に一定期間ごとに冷却負荷法による測定を行った。その結果、10例で術後に体温回復時間の延長が認められ、その後の期間ではこれが改善する傾向が観察できた。固定により顎運動が制限され、一過性の廃用的変化が咬筋を中心に生じ、その影響として体温回復時間が延長したと推察された。 3、顔面部と下肢(下腿腓腹部)の体温回復時間の比較 20~40歳代の健常者5名について冷却負荷法で比較したところ、下肢でも同様な傾向(顔面で早い者は下肢でも早い)が観察された。ただし、下肢の回復過程では体温上昇の中心が顔面ほど明確ではなかった。 これら結果から、サルコペニアの評価や介護予防に赤外線サーモグラフィーが活用できると考えられた。
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