研究概要 |
本研究は破骨前駆細胞から破骨細胞への分化機構に焦点をしぼり、口臭原因物質である硫化水素の作用メカニズムを解明することを目的とした。平成21年度は破骨前駆細胞株RAW264で認められた硫化水素の分化誘導が、マウス骨髄から分離した初代骨髄細胞で硫化水素の分化誘導が求められるか?を主題に検討した。6~10週齢のマウネ(Jcl : ICR)から大腿骨から採取し、両端を切断し、骨髄を回収した。骨髄をα-MEM,10%FCS培地で洗浄後、96マルチウェルプレートに播種した。分化指標は酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性陽性細胞(TRAP(+))とした。播種する細胞濃度の最適な条件は4.0×10^4cells/wellであった。次に培地の条件を検討した。α-MEM,10%FCS培地で7日間培養したところ、培養器に付着したマクロファージ様細胞は浮遊してしまった。しかしα-MEM,10%FCS培地にM-CSFを添加したところ細胞は浮遊することなく細胞を培養維持できた。さらに分化因子であるRANKLを添加しさらに4日間培養したところTRAP(+)細胞はRANKL非添加群に比べ有意な出現が認められた。次に硫化水素の添加条件について検討した。播種24時間後に細胞を洗浄し、浮遊細胞を除き新鮮培地で5日培養後0.25ng/ml硫化水素を曝露したところ、TRAP(+)の顕著な誘導は認められなかった。しかし播種後に浮遊細胞の存在下で細胞を4日後に新鮮培地に交換して硫化水素を曝露したところ、非曝露群に比べ有意にTRAP(+)の誘導が認められた。これらのことから、硫化水素は初代骨髄細胞から破骨細胞への分化を誘導し、その誘導は細胞の分化過程と密接に関連していることが示唆された。この結果は歯周疾患の歯槽骨吸収のメカニズム解明に意義有るものと考える。
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