本研究課題では、石灰化ナノ粒子を複合体としてではなく、タンパク質単体として分離精製を行い、単離することを目的としている。昨年度の研究成果である石灰化ナノ粒子はハイドロオキシアパタイトに強く吸着する性質を用いて単離精製を試みた。ハイドロオキシアパタイトに吸着する性質においては、ハイドロオキシアパタイトの性状によりその吸着力が大きく異なり、針状のハイドロオキシアパタイトと吸着した場合、カラムによる精製においては高濃度のリン酸を用いても溶出してこない性質を見いだした。逆に球状のハイドロオキしアパタイトを用いることに溶出に成功した。この性質は現電子顕微鏡による観察により確認を進めている。 現在、石灰化ナノ粒子のモノクロナール抗体である8D10に反応するタンパク質は3種類確認できている。本年度においてはウシ血清をサンプルとして陽イオンカラム、陰イオンカラム、ハイドロオキシアパタイトカラム、ゲル濾過カラムを駆使して単離精製を試みた。その結果、1つのタンパク質を単離精製することに成功した。その分子量は100、000kDaを超える大きなタンパク質であった。SDS電気泳動を高感度な銀染色で検討し結果でもシングルバンドとして確認することができた。 次年度においては、残りの2種類のタンパク質の単離精製を進めるとともに、これらのタンパク質とハイドロオキシアパタイトの吸着状態を電子顕微鏡で観察するとともに、これらのタンパク質を用いて人工的な歯石形成のモデルを確立する予定である。
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