本研究では、分娩第1期における誘発および促進剤の投与に関する事前指示のもと、助産師がどのように薬剤の効果等を判断しながら分娩管理を行っているかについて調査を行った。調査対象の医療施設においては、医師の事前指示のもと、助産師は分娩進行状態の判断と合わせ薬剤管理を行い、医師への報告、記録等を行っていた。医師の薬剤指示はプロトコールおよび個別の処方によるものであった。また、助産師の裁量の範囲は、薬剤の継続投与、増量、減量および中止等であり、その裁量には各産婦の状態および助産師の経験等の個人差がみられ、さらなる助産師の裁量の根拠性等の探求が必要である。なお、助産師は薬剤投与中の分娩管理において正常からの逸脱にも十分対応できており、医師への連絡は緊密に行われ、産婦および胎児の安全管理を主体的に行っていた。 また、糖尿病患者の薬剤管理に関して、調査対象病院の看護師は、夜間に診療録およびプロトコール等を閲覧および確認しながら、外来患者の電話相談を行っていた。患者自身の服薬およびインスリンの注射ミスに関しては看護師がその裁量のもと対応していたが、高血糖および低血糖等の症状が疑われるときには、医師へ必ず報告および相談を行っていた。この場合においても、看護師の対応および裁量には個人差がみられ、専門的知識、判断能力、および経験等がその要因と示唆された。 最近の看護職者が関与した薬剤管理に関する医療事故判例においては刑事責任も問われ、場合によっては行政責任も問われている。また、民事判例においても看護師の判断および専門的知識等が厳しく問われる例が多くなってきている。
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