現在、医療の高度化、複雑化に伴う業務の増大により、看護師の専門的能力を最大限に発揮することが求められている。看護職者の薬剤管理に関する裁量は、保健師助産師看護師法に規定する業務の範囲内で行われなければならない。同法第37条の規定から、主治の医師の指示があった場合には医薬品を授与し、指示を行うことができると解されている。平成22年3月の厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」報告書では、医師の「包括的指示」の積極的な活用が不可欠と記述されている。調査結果から、訪問看護分野では、医師の事前指示は患者毎個別的に、薬剤名および量、方法の記述でなされており、看護師は前回訪問後の病態の変化等に関する問診や視診、聴診、触診、打診、計測等を行い、そのアセスメントに基づき薬剤投与の可否を査定し実施している。合わせて食事内容の確認や他の日常生活に関するアセスメントやケアを行っている。特に異常状態がない限り、医師へは実施後に報告を行っている。現状としては、標準的プロトコールおよびクリティカルパス等が十分整備されてはいない。看護師は医師の指示に関し疑義がある場合、患者の病態に合わせ、そのまま様子を見る、あるいは受診病院の外来看護師を経由して医師へ検討を依頼するなど様々な確認方法を行っていた。糖尿病などの慢性疾患患者で比較的安定した病態の場合、訪問看護師は病態のアセスメントを月単位で行っており、定期受診前に医師へ病態等の報告を行い、的確な診断や治療を受けやすいようにケアを行っている実態が明らかとなった。
|