研究課題/領域番号 |
21592681
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
和住 淑子 千葉大学, 大学院・看護学研究科, 教授 (80282458)
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研究分担者 |
山本 利江 千葉大学, 大学院・看護学研究科, 教授 (70160926)
斉藤 しのぶ 千葉大学, 大学院・看護学研究科, 講師 (90292680)
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キーワード | ナイチンゲール / 看護 / 社会変革期 / 制度改革 / 文献レビュー / 看護政策 |
研究概要 |
看護の専門性の確立は、F.Nightingaleに端を発するが、彼女は、当時の英国の激しい社会変革の最中にあって、注目すべき提言を膨大な著作に書き著し、幅広い制度改革の礎を築いた。制度変革の必要性が叫ばれている今日において、看護が社会からの要請に応え、本来の役割を発揮していくためには、制度改革の礎を築いた彼女の業績から示唆を得ることが有用なはずである。本研究は、F.Nightingaleの生涯にわたる業績を制度改革の観点から系統的にレビューすることによって、さまざまな制度の変革期にある現代において、看護が本来の役割を果たしていくための示唆を得ることを目的とする。 平成23年度は、制度改革という観点において特定した12の業績を中心に、F.Nightingaleの生きた時代と現代の時間的・空間的・文化的条件の共通性と相異性を踏まえ、その今日的意義を検証した。その結果、「経営破綻をきたした慈善病院を患者の健康回復を主眼において再建した」、「救貧院のあり方自体が、病気からの回復の遅れや生活困窮者の自律の遅れを生み、結果的に経済状況を悪化させていることに着目し、病人と生活困窮者の分別と分離、制度の一本化・効率化、財源として一般地方税の適用を提言した」「疾病予防活動は、単なる市民同士の助け合いではなく、専門職を必要とする最も高度な事業であると認識し、住民の生活の中に入りこんで衛生教育をできる人材と個別の成果を統合して評価できる人材の育成および公衆衛生システムを提案した」など、看護の理念に貫かれたダイナミックな問題構造の把握と解決方法の特徴を導き出すことができた。これらの成果は、World Academy of Nursing Science 2nd International Nursing Conference,第25回日本看護歴史学会学術集会において発表した。これらは、今日我々の抱える、病院の経営効率の追求と患者サービスの向上との両立、貧困、格差、地域医療崩壊、人材育成等の課題に対し、看護が本来の役割を発揮していく上で重要な示唆を与えてくれているものと考えられる。
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