研究概要 |
本年度は,応急仮設住宅から帰村後4年目であり,継続して高齢被災者の身体機能とストレス調査,面接調査を行った. 1 身体機能 評価中越地震被災地で,身体機能とストレス測定に同意の得られた対象者は平成22年8月に9名,平成23年8月に12名であった.尿中8-OHhdG値は平成22年に全体平均12.1±5.0ng/mgCre,平成23年に全体平均6.8±7.3ng/mgCreであり,応急仮設住宅退去後の酸化ストレスに有意な変化はなかった.平成17年から平成23年まで夏期調査の継続参加者女性2名では,体重,BMI,握力(右)が有意に減少していた.平成19年から平成23年まで夏期と冬期調査の継続参加者女性3名では,体重,BMI,筋肉率で有意な変化を認めた.平成17年から平成23年までの生活満足度は,全体で福祉サービスに対する満足感の有意な低下,男性で身体の調子や身体の動き,女性で環境衛生に対する満足感の有意な低下があった. 2 生活変化の質的分析 中越沖地震の被災高齢者に同意を得て平成21年8月に4名の初回面接,平成23年9月に3名の継続面接を行った.初回対象者の平均年齢は80.5±10.7歳,男性1名,女性3名で,家族構成は一人暮らし3名,4世代同居1名であった.民族看護学に基づく分析により,初回の主要テーマは4つ抽出され,[自立の限界と他者依存][加減する他者との交わり][制限のある生活様式と適応][家で暮らす安寧]であった.継続面接の構成要素は,新築の生活に慣れるのに半年ほど要した,食生活に留意,体操や散歩,体力維持を心がけている,よく外出し近所づきあいを継続,デイサービスやヘルパー,地域事業参加など社会資源を利用,健康で自立した生活が目標,気楽にしている,等があった. 被災高齢者に対し,応急仮設住宅居住中の大幅な体重増加や筋力低下を防ぎ,再建後の生活にスムーズに適応できるよう体力維持と自立支援が望まれる.再建後,福祉サービスのニーズが変化しており,社会資源の査定と提供が重要と考えられる.
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