研究概要 |
本研究の目的は、42℃の部分浴の方法・タイミングの差異が睡眠に及ぼす影響を評価することである。本年度は方法の差異が睡眠に及ぼす影響を評価した。条件は部分浴なしで就寝する場合、就寝30分前に42℃の前腕浴20分実施する場合、就寝30分前に42℃の下腿浴20分実施する場合の3条件で、同一被験者を対象に室温26℃の環境下で実施した。なお、ラテン方格法による割付で、実験日を変えて実施した。被験者には、18:00に同一の食事を摂取させ、18:30に電極を装着し、23:00に就寝させた。そして、就寝30分前に42℃の湯に20分間前腕浴(座位)あるいは下腿浴(座位)、さらにコントロールとし部分浴をしない場合も実施した。なお、部分浴前20分間は臥床安静とした。測定は、就寝時から自然に覚醒するまで、マルチテレメータ(日本光電)を用い、脳波(C3、C4)、心電図、オトガイ筋の筋電図、眼電図をコンピュータに取り込み、睡眠解析ソフト(sleep sign)で解析した。解析後は、目視で再判定した。また、鼓膜温は、Geniusで入浴直前、入浴直後、就寝直前、就寝直後に測定した。主観的感覚としてはOuri-Shirakawa-Azumi(OSA)睡眠調査票を用い評価した。終夜睡眠脳波は12名中2名を解析した。その結果、前腕浴と下腿浴共にコントロールに比べてSWSが多く、特に第1サイクル、第2にサイクル多く見られた。主観的睡眠感では、眠気、気がかり、統合的睡眠感に3条件間で有意差(p<0.01, p<0.01, p<0.05)が認められ、前腕浴と下腿浴共にコントロールに比べて高かった。外耳道温は、部分浴直後で3条件間で有意差(p<0.05)が認められ、前腕浴が最も高かった。しかしながら、入眠直前、起床時は3条件間で差がなかった。終夜睡眠脳波の判定を2例しか実施できていないため、確定できないが、前腕浴、下腿浴ともにコントロールより良好な睡眠が得られており、下腿浴より前腕浴の方が温熱効果が高いのではないかと推察される。
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