本研究の目的は、42℃の部分浴の方法・タイミングの差異が睡眠に及ぼす影響を評価することである。本年度は部分浴の方法の差異が睡眠に及ぼす影響、前腕浴のタイミングの差異が睡眠に及ぼす影響について日本睡眠学会第36回定期学術集会及び第31回日本看護科学学会学術集会で発表を行った。部分浴の方法の差異については、PSGでは前腕浴と下腿浴共にコントロールに比べてSWSが多く、特に第1サイクル、第2サイクルに多く見られた。主観的睡眠感では、眠気、気がかり、統合的睡眠感に3条件間で有意差が認められ、前腕浴と下腿浴共にコントロールに比べて高かった。鼓膜温度では、条件間で有意差が認められ、前腕浴が最も高かった。このことから、部分浴はSWSを促進させることが明らかになった。また、前腕浴のタイミングの差異については、PSGでは3条件下で差はなく、主観的睡眠感でも、眠気、気がかり、統合的睡眠感、睡眠維持、寝つきに3条件間で有意差はなかった。また外耳道温でも、いずれも3条件間で有意差は認められなかった。このことから、部分浴の1つである前腕浴のタイミングは、就寝30分前から就寝2時間前のいずれの時間帯に実施しても差はないことが明らかになった。 2つの実験から、部分浴は深睡眠を促し、部分浴の1つである前腕浴では、就寝2時間前までに実施すれば睡眠を促進する効果があることが明らかになった。睡眠を促進させるものとして、臨床ではしばしば睡眠薬が用いられているが、現在使用されている睡眠薬のほとんどが、睡眠導入薬であり常用することで依存性をもつものも多い。しかしながら、本研究で実施した部分浴は、自然な睡眠を促進する効果、しかも睡眠の質を促進する効果があるため、その有用性は高いと考える。本研究は20代の健康な女性を対象としており、今後異なる年代での検討が必要である。
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