本研究は、学内の講義・演習が主たる学習形態である1年次・2年次学生の危険予側能力の特徴を明らかにし、基礎看護技術の講義・演習にKYTを組み入れていく方法の検討と導入の効果を検証していくことを目的としている。平成23年度は、1・2年次学生の危険予測の特徴の継続的分析と安全意識の変化、ならびにKYTの実施とその評価のための調査を行った。 1.2年次学生に対して、イラスト画を用いた生活援助(食事・排泄)場面と紙上事例を用いた点滴静脈内注射の与薬場面における危険予測の実態と特徴を検討した。生活援助場面では、片麻痺という情報を食事時の体位による誤嚥よりも麻痺側の脱臼の危険としてとらえる等、病態と援助技術との関連づけが不十分であった。点滴注射場面では、潜在的に場面に存在する危険要因から危険を予測することが困難であり、これは与薬場面で起こりやすい事故と事故を誘発させる状況要因の学習が十分ではないことが要因と考えられた。 2.2年次学生に対して、基礎看護技術の講義・演習が終了した時点での医療安全に対する考えを自由記述にて調査し、昨年度(1年次)終了時点での同調査内容との比較から質的な変化を検討した。「医療事故への思い」「医療における安全の意義や位置づけ」「安全保証のために必要なこと」「医療安全意識への学習(体験)の影響」等の7カテゴリには変化なかったが、2年次では、医療事故を第3者的立場でなく自身との関係性でとらえ、自身の技術が医療安全に関与することへの認識や責任感を強める内容へと変化していた。 3.1年次学生に対して、2年次生に用いた生活援助(排泄)場面のKYTを移乗・移送の演習終了後に実施し、KYTの印象や興味、教材の難易度、危険要因の理解等の8項目を5段階評定にて調査した。8項目の平均点は4.0~4.31で、学生のKYT評価は良好であったが、危険性の判断根拠の理解を促進させる工夫が必要と考えられた。
|