大規模災害などが発生して混乱する中で、看護職者は、救護所の一員としての救命活動が求められるとともに、避難所では、日頃の病院業務とは異なる公衆衛生活動が求められる。また、災害発生直後には、橋やトンネルの崩落、幹線道路の寸断、職員自身や家族の被災など、様々な理由によって、出勤できる職員数が極端に少なくなる上に、救急対応が必要な時期と、避難者の数が多くなる時期がほぼ重なるため、避難所での活動に支障を来たすことが予想される。こうした悪条件の中で、できるだけ混乱せずに各種の判断に必要な情報を把握して、迅速に内外に支援を要請することを目的として、災害時に用いる看護記録に着目して研究を行っている。 平成21年度は、地域の防災訓練が開催されることとなったため、計画を前倒しにして住民を対象とした調査を実施した。調査では、災害時に用いる看護記録のパイロット版を試作して、何らかの理由により看護職者が配置されていない避難所を想定して、住民自身の手で健康状態を記録することができるのか評価を行った。具体的には、看護記録シートに記載をしてもらった上で、(1) 文字の大きさや可読性、(2) 表記されている文章の適切性、(3) 自分の健康状態を伝えることができるか、(4) 記載にあたり手助けが必要かについて評価した。 調査協力者は120名で、7歳から81歳までの幅広い年齢層からの回答が得られた。有効回答113名のデータによると、回答者の88%が文字の大きさは適切で、83%~90%が表記されている文章は適切、91%がマークシートの塗りつぶしが可能と回答していた。また、看護記録のパイロット版を用いることで、90%が自分の健康状態を伝えることができると回答しており、良好な結果が得られた。ただし、44%~50%の者が、記載にあたり手助けが必要と回答しており、さらなる改善が必要と思われた。
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