災害時の悪条件(人手不足、通信途絶、専門家の不在など)の中で、できるだけ混乱せずに各種の判断に必要な情報を把握して、迅速に内外に支援を要請することを目的として、災害時に用いる看護記録に着目した研究を行っている。平成22年度は、看護記録から避難所の支援までの一連の行為が模擬体験できるシステムを開発する計画であった。だだし、このシステムでは、無料公開されているマークシート認識ソフトの利用を前提としていたものの、当該ソフトが突然の公開終了となり、また、代替機能を有する無料ソフトも存在していないことが判明したため、優先課題として計画を変更し、マークシート認識ソフトを新たに開発する必要性が生じた。そこで、マークシート認識ソフトのパイロット版を独自に作成し、避難所を支援するためのシステムづくりを実施した。また平成23年3月11日に、東日本大震災が発生したことにより、平成23年度に計画していた記録シートの公開・普及計画の一部を、前倒しで実施した。具体的には、「被災者のアセスメントシート」と「避難所の環境整備シート」を3月14日からWebサイト上で一般公開し、同時に、災害看護の研究者等へのメールによる配布や、ツイッター上でのアナウンス、被災地に派遣される本学教員への持参依頼など、様々なアプローチによって普及に努めた。その結果、JAMT隊員が避難所の巡回診療の際に、問診票として用いた例などがあり、具体的な活動に使用され、被災者の支援に役立てることができた。なお、Webサイト上で公開したファイルのダウンロード数は、公開から5日間で1日平均554件であった。使用したいとの問い合わせも寄せられ、社会的なニーズや関心の高さが伺えた。
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