本研究では、(1)避難所に住民が殺到している場面でも役立つ、(2)停電や通信途絶した状況でも無理なく記録を残せる、(3)避難所での活動経験の乏しい看護職者が活動するのに役立つ、といった3点の実現を目指し、災害時に利用する看護記録シートの開発を試みてきた。その結果、被災者のアセスメントシートと、避難所の清潔・生活環境評価シートの2種類を開発した。平成23年度は、この2種類の看護記録シートについて、より実践的な状況下での有効性を評価することを目的として、避難所内の支援活動を模擬体験できるような場を設定するための方法を検討した。具体的には、模擬被災者を相手に、ロールプレイによって被災者のアセスメントを実施したり、避難所内の環境をアセスメントする方法を開発した。そこで、看護職者を対象として、こうした方法を取り入れた研修会を2回開催し、4段階のリッカート尺度(そう思う、ややそう思う、ややそう思わない、そう思わない)を用いて看護記録シートの評価を行った。評価に際しては、そう思う、ややそう思うを、肯定的な意見として合算し、その割合を算出した。研修会に参加して回答が得られた157名の意見によると、被災者のアセスメントシートについて、高い評価が得られた項目は、「重複した質問を住民にしないために役立つ」が98.7%、「別の災害支援チームと交代する時の引継ぎに役立つ」が98.1%、「無理なく記録を残すために役立つ」が96.8%という順になった。避難所の清潔・生活環境評価シートでは、「避難所の居住環境を改善するために役立つ」が98.7%、「無理なく記録を残すために役立つ」が98.1%、「避難所での活動経験の乏しい看護職が活動するのに役立つ」が97.4%という順になった。これらは、東日本大震災を含めた災害時の活動経験の有無で比較しても違いはみられず、看護記録シートの有効性が確認できた。
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