筋収縮はアクチン-ミオシンの架橋形成(アクチンとミオシンの重なりの度合い)によって成立し、筋収縮前後の関節角度が筋収縮力に影響するという点に着目し、「生理学的・バイオメカニクス的観点」から介助者の身体的負担や力発揮の効率の変化を検証し、介助動作の提言を目的とした。1年目は、上肢伸展時に110°の肘関節角度が最も効率がよく、上肢屈曲時は90°の肘関節角度が最も効率が良いことを明らかにした。2年目は、1年目の結果を臨床で応用できるかを検証するため、看護師群との般者群の2群を対象の同様の実験を行った。動作A:上腕三頭筋を主動筋とし、臥床患者の肩部と腰部の下に上肢を伸展させながら入れる動作。動作B:上腕二頭筋を主動筋とし、患者の身体を手前に引き寄せる動作。動作C:上腕二頭筋を主動筋とし、90°で臥床患者の身体を枕(右)側に移動する動作。ABC動作は「理想角度」を指定する場合としないで比較した。結果、看護師群では各動作で有意差が見られたが、一般者群では有意差はいずれも認められなかった。看護師群の動作Aでは上腕三頭筋と上腕二頭筋の「理想群」の%EMGmaxが有意に小さかった。これは肘関節角度の違いで筋の形状が変化したことによると考えられる。また、看護師群の動作Bでは主動筋である上腕二頭筋では有意差はないものの、ほぼ全ての被検筋で「理想群」が「非理想群」の約半分の%EMGmaxであり、右の脊柱起立筋で有意に小さかった。これらのことより、介助動作における肘関節角度は伸展運動では110°、屈曲運動では90°に近い理想的な角度にすることで主動筋である上腕三頭筋や上腕二頭筋の負担が軽減し、脊柱起立筋や僧帽筋の負担も軽減できる。3年目は、研究成果を学術学会で発表した。また、今後研究を発展させるための海外事情の知見を得た。
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