21年度は主として医療側、支援者側における犯罪被害者への対応実態、受け入れ経験と心理的受傷などの問題点を明らかにする予定であったが、対象者の確保の関係から、平成22年度に調査を行う予定であった、被害者当事者に対するインタビューと同時並行的に実施することとなった。インタビュー対象者は、医療関係者3名、犯罪被害者5名、犯罪被害支援者6名、合計14名であった。 具体的には、犯罪被害者であり、医療者である者に対し、犯罪被害者と医療者の双方の立場における意識や問題点のインタビューを実施した。その際に、複数の犯罪被害者を紹介され、インタビューを実施することとなった。また、被害者と同席した犯罪被害者支援を行っている団体職員からも、被害者の立場から気づいたことなどについて、被害者自身も気づいていない独自の知見を得ることができた。 その結果、医療機関における被害者の経験には、被害直後の問題、数年以上経過後にも生じる問題、肯定的な関わり、物理環境的な問題、被害者独自ではなく一般患者にも生じる問題などがあげられた。また、消防の救急職員、患者同士の関わりなど、医療者以外の者との問題などについての言及もあった。さらに、自己の経験のみではなく、問題や傷付きの防止方法などについても話が及んだ。また、被害者自身による出版物、ホームページなどからの情報収集も行った。これらについては、22年度に学会等で発表予定である。 なお、インタビューの結果、当初予定していた病院を対象とした調査項目に変更を加える必要が生じ、調査1については、22年度の実施をすることとした。最後に、今回のインタビュー調査自体が、自己の体験を語り、社会への還元につながりうることを、被害者自身は肯定的にとらえており、調査自体が被害者へのサポートにもなっていた。
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