平成22年度は、医療関連感染(以下、HAI)サーベイランス活動の実態と効果的な実践に影響を与える要因に関する調査のための質問紙の完成、パイロットテストの実施ならびにその結果をふまえての質問紙の修正を行い、本調査を実施した。質問紙は、基礎情報22項目、個人的要因(個人的資質、能力、知識)53項目、環境要因(組織体制、支援体制)29項目、サーベイランスの構成要素75項目、サーベイランスのアウトカム5項目を含めた(合計184項目)。これまでHAIサーベイランスを過去に実施した、現在実施している感染管理担当者700名を対象にパイロットテストを実施した。回収率は18.1%(127名)、有効回答率17.9%(125名)であった。構成概念妥当性については探索的因子分析で検討し、因子負荷量が0.4以下の項目を削除した(個人的要因に関する項目では7項目、環境要因に関する項目では8項目)。個人的資質では4因子(累積寄与率51.8%)、能力では3因子(累積寄与率66.5%)、知識では2因子(累積寄与率73.9%)、組織体制では3因子(累積寄与率56.9%)、支援体制では3因子(累積寄与率59.0%)が抽出された。個人的要因ならびに環境要因に関する項目については、折半法ならびにCronbach's信頼係数によって内的整合性を検討した。折半法では0.71~0.94、Cronbach's信頼係数では0.87~0.98であった。アウトカムに関する項目の回答の選択肢を修正し、本調査用の質問紙とした。本調査では、平成22年6月時点で日本医療評価機能の認可を受けた全国の医療施設(2563箇所)から無作為に1289か所を選出し、各施設の感染管理担当者宛てに調査協力依頼文書と質問紙を郵送した。回収率は29.4%(379名)、有効回答率は29.0%(374名)であった。次年度は、本調査のデータ分析をすすめていく予定である。
|