前年度までの研究において、卓越した看護実践を行っている看護師の安楽概念獲得プロセスと安楽なケア実践について、その発展過程と影響要因の可視化を行っている。本年度は、先行研究において作成した安楽モデルの枠組みを使用し、看護基礎教育において教授すべき安楽なケア実践のための教授内容の選定を行った。具体的には、看護における中心定理である【安楽】の「定義」(研究によって明確になった、精神的身体的に苦痛がない、楽であること、快適であること、日常生活をすごせることを含む定義を提示する)を明確に学生に示すこと、そして、看護における安楽が、看護における中心定理であると共に、特定の看護技術に特化して使用されているという二重構造であることの教授を行う。次に、患者の安楽な状態に関連する要素を、①看護師関連(安全の確保、コミュニケーションの成立、苦痛を与えない、看護師の能力、患者優先のケア、家族と看護師との信頼関係、十分な看護職員数、看護師の時間的余裕、チーム医療)、②患者関連(患者自身の意思決定、患者の希望、患者の精神的安定、患者の納得、基本的ニーズの充足、苦痛がない、安楽な体位、患者の日常に近い生活、経済面の安定、自然治癒力の増加、前向きな気持ち)、③環境関連(整った病室環境、人的環境の充実、必要物品の充足)、④家族関連(家族のサポート)、の大きく4つに分類し、それぞれの内容に関して、選定した具体的内容を教授する。これらの教授においては、本研究にて作成した看護実践のプロセスモデルを活用し、看護実践の様相を具体的に学生に提示し、看護基礎教育における安楽ケア実践力を育むためのプログラムとし、試作および評価を行った。
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