多様な療養生活を送っている患者の手指汚染の程度を明らかにするために、患者の手指から細菌採取とATP測定を行なった。対象は(1)血液透析患者50名、(2)外来化学療法を受ける患者56名、(3)入院中の血液疾患患者45名、(4)手術後1日目の患者48名、(5)老人保健施設入居者44名とした。 データ収集は手指衛生の前後に実施し、細菌採取は手型寒天培地に手掌と接種してもらい、細菌数と菌種同定を行った。細菌採取と反対側の手掌は綿棒で拭き取りATP値を測定した。通院患者は来院直後、入院患者は起床時に実施した。 手指衛生前後の細菌コロニー数は対象(1)365.5→123.1個、(2)265.6→140.4個、(3)210.0→70.9個、(4)407.3→154.8個、(5)704.1→434.0個といずれの群も手指衛生後に減少した。(5)老人保健施設入居者は車椅子利用者が多く行動範囲も広いため、5群の中で手指に最も細菌付着数が多くなった可能性がある。一方、血液疾患患者は日常的な感染予防行動が影響し、細菌付着数が最も少なくなったと思われる。また、手指衛生は石鹸と流水で行ってもらったにも関わらず、(2)化学療法患者と(5)老人保健施設入居者の細菌除去率は50%以下であった。その他、(1)血液透析患者は石鹸と流水を用い、(3)血液疾患患者と(4)手術後患者はウエットティッシュで手指を拭いてもらい、60~70%は細菌除去できていた。 また、MRSAの検出件数は(1)6名、(2)5名、(3)0名、(4)9名、(5)14名であり、血液疾患患者以外の対象群で手指衛生の強化が示唆された。
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