平成22年度は、慢性病看護の熟練看護師の実践経験から、高齢慢性病者が終末に至る過程において、看護師が全体として生きる患者の「自己」を把握する視点、患者の意向を捉える状況を分析した。 慢性疾患看護における熟練看護師7名によるケア事例インタビューから、熟練看護師は、対象者の「自己」について、夢や希望や期待や潜在能力を持ち続ける自己、納得を探し、意志と誇りを持ち続ける自己、限られた時間に気づく自己、限られた時間に混乱する自己を捉え、家族の支えなくしては存在しない自己と、他者と自己との応答する自己、二面性を内包する自己の側面を捉えていた。 患者のケアの場面では、看護師は以下の状況で患者にかかわる患者の意向を把握していた。 すなわち、身体状況が悪化し治療変更がある状況(新たな治療の追加、治療の選択肢の狭まりなど)、日常生活に支援が必要となった状況、悪化している身体と患者が矛盾した行動をとる状況、悪化している身体を患者が自分でセルフケアをする状況、家族との生活の営みの流れと軌跡に軋轢が生じている状況、看護師との相互作用の合間に見せる患者の反応、であった。 慢性病者の終末への軌跡はみとおしにくく、予測的に患者の意志を把握することは難しい。本結果は、主体として在る患者の意向把握がケアを通して可能な局面として示された。
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