研究概要 |
本調査の大きな特徴は,慢性腎臓病(CKD)患者を対象とした前向き調査であるということと,患者の選好を分析するためにコンジョイント分析を用いる点である.本調査の進行と同時に,初年度から継続してコンジョイント分析の妥当性の検証を行ってきた.2010年は,医師を対象としたコンジョイント調査を実亀し,複数モデルの比較が数値として評価可能かの確認と,その際に統一するべき項目(質問数や内容)を明らかにした.また,腹膜透析患者を対象とした選好構造解析を行った.本調査により質問数の設定や方法に無理がないことが確認できた.両調査の結果は,2010年11月の第16回日本腹膜透析医学会において発表した.さらに,論文化の準備を進めているところである.また,治療法選択に関するコンジョイント調査(本調査)は引き続き進行中である. 近年,腎機能が認知機能障害へ与える影響について数々の報告がなされている.本研究は潜在的な意思決定を測定するものであり,認知機能による影響は無視できない.そこで,本調査内容に高次脳機能検査を追加することを検討した.既に,別の研究においてCKD患者の認知機能については測定を始めている.結果の一部は2010年6月の第55回日本透析医学会において発表した.測定用バッテリーはJSS-H (Japan stroke scale-higher cortical function),長谷川式簡易知能検査(HDS-R),Mini Mental State Examination (MMSE), Trail Making Test A and Bとした.JSS-Hは日本脳卒中学会により作成され,評価時の重みづけとしてコンジョイント分析を用いている.認知機能と治療法選択に関する解析は,23年度に予定している.
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