【目的】今年度は、2型糖尿病患者において、新たな情動ストレス(計算ストレス)前後のストレス関連ホルモンを測定することにより、ストレス対処系(HPA-axis)が正常に働くかを明らかにすることを目的とした。 【方法】2型糖尿病患者71名及び健常者46名に対して、計算ストレス負荷前後における血清中の種々の神経・内分泌・免疫系活性物質を測定するとともに、ストレス関連QOL(自覚ストレス度、コピアレンス感、自己効力感)との関連を検討した。 【結果】2型糖尿病患者において、HbA_1C、空腹時血糖および罹病期間とストレス関連QOL項目との間に有意な関連を認めなかった。糖尿病患者では、すでに負荷前の状態においてACTH、コルチゾール値が健常群より有意に高値を示したが、計算ストレス負荷後には患者群、健常群ともにコルチゾール値は負荷前より有意に増加した。しかし、負荷後のコルチゾール増加の割合は、健常群より患者群の方がはるかに小さかった。 【結語】2型糖尿病患者においては、安静時にも血中コルチゾール値が高いこと、ストレス負荷後にはコルチゾール上昇反応は認められるものの、その増加の割合は健常群よりも小さく、ストレス対処系(HPA-axis)が十分に働いていない可能性が示唆された。
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