本研究は高次脳機能障害と総称される認知機能障害について看護者の観察からスクリーニングする可能性を模索するものである。本年度はFlanneryにより開発されたLevel of Functioning Assessment Scale(以下LOCFAS)を日本語に翻訳し、信頼性・妥当性について検証することについて計画した。日本語に翻訳した後、認知機能障害のリハビリテーションに携わる基幹病院などの233施設に調査を依頼し、同意の得られた39施設に施設が希望した部数の質問紙を送付した。質問紙の内容はLOCFASの翻訳版とそのもととなったRancho Los Amigos Cognitive Functioning Scaleを付し、レベル毎に138項目の妥当性についてリッカートスケールで尋ね、また意見を自由記載にて尋ねた。送付部数は311部で176名から回答が得られた。レベル毎の内容妥当性をクロンバックα係数を求め、0.836~0.956と高い信頼性が見られた。また、LOCFAS原本と因子構成の整合性について因子分析を行ったところ、差異が認められた。しかし、因子の内容としては、刺激の知覚と刺激への反応、注意集中に関連する因子、自己や環境への認識、問題解決などの因子などが見いだされ、認知機能の意味内容としては十分信頼出来るものであり、また、日本の高次脳機能障害の理解の傾向を示す結果と考えられる。 本年度行う予定であった、評価者間妥当性の調査、基準関連妥当性の検討についての調査は現在進行中であり、次年度に成果を報告できる予定である。
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