平成23年度の研究目的は前年までに作成したLOCFAS日本語版を用いて行った調査を本にLOCFAS日本語版の信頼性・妥当性について分析し検証することであった。 内容妥当性は合計61名の患者についてLOCFAS日本語版、Glasgow Coma Scale (GCS)、Japan Coma Scale (JCS)、Mini-Mental State Examination (MMSE)、NIH Stroke Scale (NIHSS)、Functional Independence Measure (FIM)について評価した。レベル毎のCronbachα係数は0.866~0.948であり、高い信頼性が確認できた。また、LOCFAS日本語版と他の尺度との順位相関係数を求めた。強い相関を認め、意識障害、神経学的重症度、認知機能、日常生活の自立度の面から基準関連妥当性を確認できた。また、患者の背景として急性期病棟の患者と回復期病棟の違いについても検討したところ、回復期病棟の患者ではLOCFAS日本語版とFIMの間でのみ有意な相関を認めなかった。このことは、高次脳機能障害の見えない障害とされる特徴を表すものと考えられ、意識障害が改善してくると日常生活の自立度と認知機能の評価は必ずしも一致しなくなり、見えない障害になること可能性があることを示唆するものである。 また、評価者間信頼性の分析では研究者と臨床看護師で10組のペアが同一の患者を評価した結果からκ係数を求めて検証した。κ=0.112~0.980であり10例中4例は一致度が高かったがその他は一致度にばらつきが見られた。これはビデオなど同一場面での評価が困難であることや、評価方法の統一が十分でなかったことが原因と考えられ、今後LOCFAS日本語版の精密な解説やトレーニング方法の周知が必要と考える。
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