研究概要 |
初年度は,(1)開発尺度の対象診療科の特定,(2)手術患者と対象とした睡眠周期の測定,(3)看護師の客観的睡眠の評価の検討を行った。 (1) 国内外の先行文献の術後譫妄発症要因から診療科特有の因子が多く,診療科を問わない汎用性のある発症予測尺度の開発は困難と判断した。そこで対象診療科の検討を行い,「虚弱高齢者」「認知機能低下がある高齢者」「介護保険施設入所者」が手術を受ける機会の多い整形外科を対象とした尺度開発が有益と考えた。 (2) 睡眠周期の測定は,非拘束型の睡眠周期測定装置「眠りスキャン(パラマウントベッド社製)」を使用し,術後5日間の測定を行った。対象は,大腿骨頚部・転子部骨折6名,大腿骨骨頭壊死1名,変形性膝関節症2名の計9名,平均年令は77.24歳,全員女性であった。譫妄発症者は1名であった。 譫妄非発症者の術後5日間の睡眠時間は,7時間から15時間と個人差が大きかったが,個人内の日差は3時間程度であった。睡眠時間帯は22時~5時の間に集中し,2~3時間毎に覚醒をしていた。譫妄発症者では,術当日20時間,11時間, 1時間と睡眠時間が激減し,症状の回復とともに睡眠時間が微増していった。術当日から術後1日目21時までは,回診・食事以外に覚醒することはなく睡眠状態が継続していた。譫妄発症後では夜間殆ど覚醒している日が3日続き,日中の睡眠も測定されなかった。睡眠に関連する観察を密にすることで譫妄発症の予測が可能になると考えた。 (3) 看護師の睡眠の評価は,患者の睡眠状態を「熟睡」から「覚醒」の5段階で評価する尺度を作成し,2時間毎に病棟看護師に評価を依頼した。眠りスキャンとの相関は夜間では70%,日中では40~50%であった。日中の評価に若干乖離が観られたことから,評価方法・時期の再検討と行う必要がある。
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