本年度は、昨年度に行ったアダプテーションに関する検討をもとにセルフマネジメント教育を展開し、指導方法および作成した教材「呼吸のセルフマネジメント指導用テキスト」の有用性について検討した。セルフマネジメント教育のスタイルとしては、個別的な指導、少人数グループ制の指導等が考えられるが、本年度は個別的な指導によるセルフマネジメント教育へのアドヒアランスをプライマリーアウトカムとして評価した。セルフマネジメントへのアドヒアランスを向上させる上で、昨年度作成したテキストより指導内容別のテキスト別刷小冊子を作成、指導の進行に応じて必要部分を配布し指導した。また、指導内容では「セルフマネジメントの重要性」「健康を維持・増進する運動」より指導を開始した。「セルフマネジメントの重要性」では、セルフマネジメントの疾患進行に対する予防効果、ゴール設定、アクションプランの作成について重点をおき、「健康を維持・増進する運動」では、個々の目標とするストレッチやウオーキングの歩数や時間を共に相談し別刷小冊子内の表に直接記入して指導した。その後に「息切れを軽くする日常生活の工夫」「急な増悪の早期発見」、「感染予防」の指導を展開した。一方、「セルフマネジメントダイアリー」印刷・配布し、セルフモニタリング能力の向上を目的に記録を指導、指導時のコミニュケーションツールとしても使用した。慢性呼吸器疾患患者44名(平均年齢74.3歳、男性/女性:40/4、疾患内訳COPD38、IPF3、他3)に指導を行い、アドヒアランスは95%と良好であった。また、セルフモニタリングにおいてボルグスケールCR10によるアセスメントが急性増悪の有無や日々の活動における動作レベルの決定に有用となることが示唆された。本年度は最終年度ではあるが、次年度に同教材を用いた少人数グループ制のセルフマネジメント教育による息切れやQOLの改善効果、増悪の予防効果について、規模の大きい無作為対照試験を展開する予定である。
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