本研究の目的は「生活者の視点で関わる看護実践モデル」を作成し、看護が生活者の視点で関わることの意義や成果を明らかにすることである。 平成21年度以前より継続中の「生活者の視点で関わる看護実践モデル」(案)を含む「看護の教育的関わりモデル」を用いた実践研究において、研究参加者たちは、「生活者の視点で関わる看護実践モデル」(案)を知ることにより、まず、対象者との何気ない日々の関わりの中に、対象者にとってかけがえのない価値観や個別の生き方を見いだし、対象者への関心や理解が深まるようになった。次第に、診療の補助業務以外で、それまで意識していなかった対象者との日々の関わりを、看護の一部として意識するように変化した。1年近い実践研究の中で、研究参加者の一人は、心内膜炎で入院した70歳代の男性が、なかなか療養に専念できない様子に疑問を感じ、男性の日々の生活を丁寧に聞いていった。するとこの男性はキウィ農家を営んでおり、キウィは収穫の時期がすごく大事で気が気ではないこと、自分が指示することができれば収穫ができるため、何とかその時期までに退院しなければと焦っていたことがわかった。研究参加者は医師と男性の希望する時期までに治療計画が進むように調整し、男性は療養に向き合い、予定通りに退院することができた。 研究参加者はポストインタビューで、モデルを活用・意識することで、対象者との関わりあいを通して見えてきた、対象者にとっての生活の意味を、看護の実践に活かせるようになっていることを実感していた。またそれまでは看護実践の成果として捉えられていなかった対象者の変化を評価できるようになりつつあることを語っていた。 このように、実践事例の分析を積み重ねることを通して、「生活者の視点で関わる看護実践モデル」(案)の構成要素および成り立ちを精選し、概念の説明力を高めていきたい。
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