本研究の目的は「生活者の視点で関わる看護実践モデル」を作成し、看護が生活者の視点で関わることの意義や成果を明らかにすることである。 平成21年度から平成22年度までに検討してきたことをもとに、「生活者の視点で関わる看護実践モデル」の親モデルである「看護の教育的関わりモデル」を構成する概念の1つ「生活者としての事実とその意味のわかち合い」の定義を、「生活者である対象者が、病気や生活の出来事をどのように捉え、感じているかを、看護職者が対象者との関わりを通して見いだし、理解するとともに、対象者に話したり、伝えたり、確認しあったりするプロセスのこと」に修正した。 実践事例の検討を積み重ねた結果、「生活者の視点で関わる看護実践モデル」は次のように説明できる。看護職者は、対象者との日々の関わりあいを通して、対象者にとってかけがえのない価値観、個別の生き方、対象者にとっての生活の意味が見えてくるようになり、対象者についての理解が深まることで「わかった!」と「腑に落ちる」ことがある。そして、看護職者の解釈が変わることにより、看護職者の態度と行動が変わる。対象者は、この看護職者の態度・行動の変化により「わかってもらえた感」が生まれ、対象者自身の心もちや行動の変化へと繋がっていく。 本研究により、看護職者が「生活者の視点で関わる」こと(この関わりを看護実践として意識化すること)により、対象者に対する理解が深まり、そのプロセスそのものが、対象者自身の「心もちや行動の変化」という成果に繋がっていくという示唆を得た。
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