平成23年度の研究目的は、外回り看護師が患者の手術侵襲を最小限にするために先見性に基づいた行動を明らかにし、主要なカテゴリーを抽出し構造化を行うことである。平成21年~22年度に行った調査結果をもとにグラウンデッドセオリーアプローチによるデータ分析を行った。その結果、手術開始前から手術終了までの間に、外回り看護師が手術患者に対する先見性に基づく行動の構造を検討した結果、抽出された86個の1次コードから、25個のサブカテゴリー、9個のカテゴリー、【生活を見通す】、【生命の歯車を回す】、【医療者を快調にする】の3個のコアカテゴリーで構成された。これら3つのコアカテゴリーが手術開始から手術終了まで関連し合って存在していることが明らかとなった。外回り看護師が患者の【生活を見通す】行動とは、手術開始前から手術終了後の時間軸のなかで、<手術室に入室する前から患者に覆布がかかるまで>の局面、<手術が開始され、患者の身体にメスが入り、生命がもっとも危機的状態に陥る>局面、<麻酔から覚醒し、元の状態に戻っていく>局面、これら3つの局面を捉え、<生活体>から<生命体>、<生命体>から<生活体>への移行をスムーズにしていくために『先手を打つ』、『手術の山場を見極める』、『守り抜いた生命を繋ぐ』。その方向性は生活体としての患者の生活を見通すことである。外回り看護師が患者の【生命の歯車を回す】行動とは、患者の不安や苦痛をわかり、患者にどれだけ寄り添えるか『患者に成り代わる』内側の層と、『患者の生命の安全を守り抜く』、『患者の生命力を見極める』外側の層を連動させ、目に見えるものと見えないものを捉え、患者を焦点化して見ることと俯瞰的に見ること、これらの見方を連動して患者の生命力を捉え、患者の生命の歯車を回す方法とその加減を見極め、患者の生命に力を与えることである。外回り看護師が【医療者を快調にする】行動とは、手術の山場で術者の呼吸に合わせて動くことである。そのため、手術がスムーズに流れるように場や間を整え、どのような状況になっても医療者の動きにすぐに応じられるように構えてかかることである。これらの行動がうまく機能することは、手術が円滑に進行し、手術侵襲が最小限となり、患者の回復を促進することへとつながる。 本研究によって、外回り看護師の手術患者に対する先見性に基づいた行動の定義は、「患者が手術室に入室した時点から常に患者の生活を見通し、自らの五感と皮膚を介して愚者の生命の歯車を回し、手術の山場で術者の呼吸に合わせて動くことである」。この研究の成果は、これまであまりクローズアップされなかった手術室看護師の行動の意味がより明確になったことである。手術室看護師は、患者の生命を守ることだけでなく、その生命の守り方が重要であった。さらに手術室看護師は、患者の生活を見通し手術後に患者が元の生活にすぐに戻ることができるよう行動していた。これらの行動が明確になったことは、手術看護において意義があると言える。
|