【目的】秋田県における障害児歯科拠点病院での知的障害児の歯科診療の実態を明らかにする。【方法】1.対象:県中央の障害児施設の障害児歯科外来を受診した初診患者(18歳未満)の歯科診療記録(平成19年1月~21年12月までの3年間)。2.調査方法:歯科外来を受診した障害児(初診)の診療記録からデータ収集した。3.調査内容:1)年間の初診患児数。2)患児の属性:(1)年齢、性別、(2)障害の種類、(3)居住区。3)歯科診療:(1)受診経緯、(2)主訴、(3)う蝕罹患状況、(4)対応法、(5)歯科保健指導の有無。5.倫理的配慮:秋田大学医学部倫理委員会の審査を受け、承認を得て行った。対象施設の管理責任者の同意を得た。【結果】1.対象の概要:調査対象3年間の初診患児数は、732名であった。平均年齢(±標準偏差)は、9.5(±4.3)歳であった。2.歯科診療の状況:1)受診経緯:直接来院が646名(88.3%)と最も多かった。2)主訴:検診希望が309名(42.2%)、う蝕治療289名(39.5%)であった。3)う蝕罹患状況:乳歯のう蝕罹患ありは225名(30.7%)、永久歯のう蝕罹患ありは207名(28.3%)であった。4)対応法:「開口器使用」が483名(66.0%)、「レストレイナー使用」が454名(62.0%)と6割以上であった。「レストレイナー使用」は、年齢別では就学後の割合が高く(p<0.05)、障害別では知的障害の割合が高かった(p〈0.05)。5)歯科保健指導:歯磨き指導は250名(34.2%)と3割以上が実施されていた。定期健診を受けているのは、全体では174名(23.8%)と3割以下であった。【考察】初診患児は、就学後の割合が約8割であり、障害別では、知的障害が約7割で、対応が困難なケースが受診していることが推察される。体動コントロールを実施していたのは約6割で、絵カードの導入等の対応について検討が必要である。歯科拠点病院と開業医の連携、保護者と医療関係者の理解が不可欠であり、今後の課題と考える。
|