平成21年度の研究実施計画は、(1)高度生殖医療に携わる看護師への聞き取り調査より現状と課題を分析すること、(2)不妊治療の終止に迷う女性への縦断調査のスタートアップとして、面接調査への参加者のリクルートと聞き取り調査を開始する、の2点であった。 (1)の調査期間は平成21年5月~平成22年2月、対象は高度生殖医療に携わっている看護師9名(4施設)であった。平均年齢は43.2歳(SD8.9)、看護職としての就業経験は平均19.1年(SD7.3)、生殖医療機関での就業経験は平均6.4年(SD3.1)であり、生殖看護に関連する資格(不妊症認定看護師、IVFコーディネーター等)を有している者は7名であった。インタビューデータを質的に分析した結果、高度生殖医療に携わる看護職者が行う看護カウンセリングの実態は、【共にあろうとする志向性の作動】を基盤とし、【治療的側面】と【間主観的側面】の2側面を備えた実践活動であった。こうした実践は看護者の経験に頼る部分が多く主観的であり、短時間、治療の時期による対応の工夫など、看護者個人の熟練度に左右されうる看護機能でもあるため、生殖看護の専門性の確立には、看護者のキャリア発達も含めたシステムの構築が必要である事が示唆された。(2)縦断調査のスタートアップとして、40歳以上で不妊治療の終止を考えている女性、あるいは治療を休止している女性を機縁法でリクルートし、5名から調査協力の意思を口頭にて確認した。そのうち1名は聞き取り調査を実施した。聞き取り時間は80分であった。インタビューでは、結婚から現在までの時間軸に沿った経緯(挙児希望、受診動機、治療内容と選択について)と、相互作用(夫や家族、仕事等)を中心に、ターニングポイントの生起と帰結を意識して実施した。今後はデータの蓄積を行い、不妊治療の終止を巡る女性の不妊という事実の認識変容プロセスの構造化を進めていく。
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