研究課題/領域番号 |
21592791
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
阿部 正子 長野県看護大学, 看護学部, 准教授 (10360017)
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キーワード | 生殖看護 / 生殖医療 / 不妊女性 / 質的研究 |
研究概要 |
H23年度は縦断調査を開始して2年目であり、6名の対象者へ聞き取り調査を依頼した。そのうち4名から研究参加への同意が得られた。内訳は治療終結を決めた直後のものが2名、治療の終結を今年いっぱいと決めているものが1名、不妊治療の末ダウン症の女児を出産後3年が経過したものが1名であった。調査への協力意思を表明後に撤回したものは1名、調査参加の同意が得られなかったものが1名であった。インタビューは平均1時間20分で逐語録A4191頁であった。 分析方法として修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを採用し分析を進めており、現時点における結果として、不妊治療の終止を巡る女性の治療継続プロセスは【自分への説明責任の増大】が【治療サイクルの習慣化】によって再生産され、治療を中止するといった結論を一時保留して先延ばしにする【治療終止の決断の棚上げ】に帰結し、治療が続けられる循環構造が明らかとなった。コア概念である【自分への説明責任の増大】は、女性が治療成果を得られないままに不妊治療を続けていることに対して、夫や両親そして自分自身に"子どもが出来ない言い訳"をつけ難くしていくことを意味し、治療の代償行動化を引き起こしていると推察された。また【治療サイクルの習慣化】は、女性の挙児希望を常に維持する言説が送られる〔医師による治療方針への追従の牽引〕というペースメーカーと、夫の回避的な対応が手段的なサポートの提供にすり替えられ、そうした夫の言動を"協力的"と妻が共感的に受け止めることによって、妻が意思決定の担い手にならざるを得ない〔夫婦のコミュニケーションの不全化〕を背景に反復されていた。このように女性は葛藤を抱きながら不妊というアイデンティティを手放せず、さらに子どもがいない将来への適応をより一層困難にすることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査は予定通りの進捗状況であるが、変更点として調査対象者人数が当初は15名程度を想定していたが、最終的には見込みの3分の2程度になる恐れがある。今後もリクルートを継続するが、このような縦断的な聞き取り調査を行った研究成果はほとんどなく、少数であっても聞き取り内容は充実しており、対象者のリクルート数の減少が結果の質を左右する可能性は低いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は分析結果の精緻化を図り、不妊カップルを取り巻く周囲との相互作用の特徴と日本人の行動特性を基盤とした理論を構築する。さらに生殖医療の現場で治療の終止について悩むカップルへの不妊カウンセリングに活用できるアセスメントガイドの考案を目指す。 分析の精緻化については研究協力者との分析結果の照合を行い、さらに有識者によるスーパーバイズを受ける予定である。なお分析結果の質的検証の実施については、すでにフィールドへ協力依頼を行い1施設より承諾を得ている。
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