今年度は縦断調査の分析とアセスメントガイドの考案、その有効性の検討を行った。 妊孕性の限界が近づいている女性の不妊治療を継続するプロセスは、【自分への説明責任の増大】が【治療サイクルの習慣化】によって再生産され、【治療終止の決断の棚上げ】に帰結する循環構造を呈していた。女性は治療の長期化によって妊孕力の限界を実感する【困難感の明確化】と、他者の期待に応えられない自責の念によって【治療の代償行動化】が起こり、【揺らぎへの対応】によって情緒的なバランスを取っていた。 以上、6つのカテゴリを基に【自分への説明責任の増大】の再生を強める要因の有無や、強さを多角的に評価するとともに、女性の行動パターンのもっともらしい原因は何かを探索し、それに基づいた介入援助をデザインするためのツールとして、アセスメントガイドを考案した。 7名にアセスメントガイドを用いたカウンセリングを実施し、そのうち1名からカウンセリング実施1か月後に評価面接への同意を得た。その結果、〔医師による治療方針への追従の牽引〕〔知識不足〕〔夫や両親のために治療する〕が影響要因として推定される事例が多く、特に過大な治療への期待と妊娠がゴールになっていることが明らかとなった。また夫や家族からの期待に応えられないジレンマについて、カウンセリングを通して得られた妊孕力に関する正しい情報の理解によってネガティブな感情の軽快を経験し、さらに自分のやってきたことはこれでいいと意識化できたことで、新たな人生を見据えるきっかけとなっていることが明らかとなった。以上より、このアセスメントガイドは彼女たちの行動パターンを整理し、自分なりの納得の仕方を模索する手掛かりを提供するための「気づき」を促進するためのツールとして、一定の効果が期待できることが示唆された。今後は、アセスメントガイドを用いるプロトコールの開発と普及を目指していく。
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