医療的ケアを必要とする小児の親が在宅療養を選択し意思決定する過程、および意思決定過程に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とし、前年度に引き続き、半構成的面接調査を実施した。2010年度は、退院時年齢0歳11か月~1歳2か月の医療的ケアを要する小児2名の親(母親2名、父親2名)を対象に、面接ガイドを用いた半構成的面接調査を実施した。2009年度に面接調査を行った4事例(母親4名、父親3名)と併せ、11名の面接データが得られ、逐語録の質的帰納的分析の途上である。 現段階で明らかとなってきている点は、母親は早い段階から「児を連れて帰りたい」という思いをもつ場合が多く、「連れて帰りたい思い」と、「生命の危機への不安」や「病院は児のために安全」といった思いとの間での揺れや葛藤が見られ、「ケアに対する漠然とした不安」「児の世話による愛情の強まり」「自己の選択の正当化」などの過程を経て、在宅の選択に至っていた。反対に、当初は「連れて帰りたくない」という思いを抱いていた場合もあり、「家でのケアに対する強い不安」が示されていたが、「周囲からの後押し」によって在宅に至った結果、「帰ってみて児への愛情が強まった」と在宅の選択への思いが肯定的に変化していた。一方、父親については、「当初は在宅という認識がない」という状況がほぼ共通しており、医療者側から在宅の話が出されると、「退院できるぐらいになったという理解」「大丈夫と言われたので決めた」などの認識から在宅を選択していた。また、「やってみなければわからないという思い」「家族全員で一緒に家庭に」の二つのカテゴリは、父親に特徴的に見られていた。
|