研究概要 |
本研究は,若年性乳がん女性ががんとともに生きる患者役割と女性として抱えている性役割に注目し,その問題構造を明らかにすることを目的とする.今年度は若年性乳がん女性である「当事者」とその「支援者」にインタビュー調査を実施し,質的分析を行った. 1.「当事者」の問題構造 対象は,発症年齢が31~45歳であった乳がん女性5名。[結果]社会的に獲得してきた性役割を維持するという<外的役割の存続>と病や治療の副作用で弱っている状況を周囲に<悟られない行為>で家族や職場にも影響しないよう<役割をふるまう>ことをしていた<役割をふるまう>ため,<瞬時の決定作業>をしながら<別の理由で休む>などをし,治療や副作用に関して体調管理をしながら,性役割に関わる<周囲の問題を優先>していた.しかし,性役割を遂行することが<病の在る自身への自信>になっており,<回復への希望>や<生きていく気力>になっていた. 2.「支援者」の認識構造 対象は,がん専門看護師,乳がん看護認定看護師<以下支援者>5名<臨床経験26年~7年>であった.[結果]支援者は,対象者が若年者である観点から,乳がんの治療過程と生活像を合わせて支援をしていた.当事者には,「疾患由来の特徴問題」として浮上する<婚姻による近親者との関係混乱>,<経済困窮上の治療>,<職業継続の不具合>,<妊孕性の影響>といった問題の認識をもちながら接していた.しかし,それらの情報は<入手しにくい情報>と捉えていた.そのため,当事者の<初回の反応重視>,意図的に<聞かない対応>という「対象との関係形成の準備」から始めていた.そして支援者は当事者から<話しだす環境>,<情報開示をした時を逃さない>とする「若年者の介入計略」を行いながら支援方法を模索していた. これらの分析を元に,治療過程と性役割遂行の困難さがある半面,性役割遂行は闘病意欲に関わることが示唆された.
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