【研究の意義】厚生省(現;厚生労働省)は妊娠可能な女性に対して、神経管閉鎖障害のリスクを低減するために葉酸400μg/日の摂取を推進している。しかし、若い女性の食への関心は薄く、葉酸摂取量は推奨量を大きく下回っている。それ故、葉酸摂取を強化した食育への取り組みが急務である。【目的】葉酸摂取を強化するための食育ガイドラインを構築する【方法】参加同意者を無作為に介入群、非介入群に2群に割付する。介入期間は12カ月。介入群に4カ月毎に計3回、葉酸強化に向けた食育パンフレットを配布。介入前後に葉酸摂取量、精神健康度(うつ病自己評価尺度:CES-D日本語版)、保健行動(HLC尺度)を測定した。【結果】分析対象は介入群45名、非介入群45名の計90名。全対象者の平均年齢は22.3±4.1歳、平均BMIは20.9±2.4kg/m^2。平均葉酸摂取量は介入群241.8±117.6μg、非介入群228.9±91.8μg、推奨量240μg/日を満たしていない者は介入群で50.9%、非介入群で49.1%と有意差は認めなかった。CES-D16以上の抑うつと診断される者は介入群35.6%で、非介入群の48.9%に比べ少ないものの、有意差は認めなかった。HLC得点は介入、非介入群ともに葉酸推奨量を満たしている者が満たしていない者に比べて有意に高い値を示した(p<0.01)。介入群は非介入群に比べて、「1日の葉酸摂取量を知っている」、「葉酸が含まれている食品を5つ以上知っている」、「厚生省が提示している葉酸ガイドラインを知っている」と答えた者が有意に多かった(p<0.05)【考察】葉酸強化を促す食育パンフレットを定期的に配布することで、葉酸認知度は高くなるが、葉酸摂取量を増加するまでの行動変容には至らなかった。保健行動が高い者ほど葉酸推奨量を満たしている者の割合が高いことより、保健行動を高める介入方法を検討する必要性が示唆された。
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