研究概要 |
I.目的 本研究の全体構想は、育児に取り組む母親の身体的・精神的状態を継続的に明らかにするとともに、"初めて育児に取り組む母親の育児力強化のための継続的コーチング・プログラム"を作成し、その効果を検証することである。 平成22年度は、21年度に引き続き、育児期の母親の身体的・精神的状態を継続的に調査した。 II.方法 正期産後の褥婦65名を対象に、産褥1週、1ヶ月、4ヶ月、9ヶ月、12ヶ月の5時点で縦断的調査を行った。調査内容は、生理的評価指標として心拍変動R-R間隔周波数解析(HF/LF)、尿中カテコールアミン3分画、コルチゾールを計測し、心理的評価指標としで日本版精神健康調査票(GHQ28)、日本版エジンバラ産後うつ自己評価表(EPDS)、背景要因として年齢、職業、生活状況や心配事等に関する自記式質問紙を用いた。 III.結果及び考察(産後1ケ月までの解析結果) GHQ28、LH/FH値は、産褥1週よりも1ヶ月の方が有意に高かった(p<.05)。産褥1ヶ月の尿中コルチゾールに対しては、尿中ドーパミン(b_s=-.40,p=.032)、ノルアドレナリン(b_s=.39,p=.035)、授乳回数(b_s=.31,p=.025)、夫との会話時間(b_s=-.26,p=.038)が影響し(R^2=.14,F=2.54,p=.031)、EPSDに対しては1ヶ月のGHQ28(b_s=.50,p=.000)、1週のEPSD(b_s=.29,p=.012)が有意に影響していた(R^2=.52,F=10.04,p=.000)。以上により産褥1週よりも1ヶ月の方が生理的、心理的にストレスフルであることがわかった。また、産褥1ヶ月の生理的反応は頻回な授乳により強くなり、夫との会話時間により緩和されること、心理的反応は、産褥1週の心理状態により左右されることがわかった。
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