研究概要 |
目的 本研究の目的は、育児期における母親の1年間のストレス反応を生理的及び心理的に分析し、その特徴を明らかにすることである。 方法 正期産後の褥婦57名を対象に、産褥1週、1ヶ月、4ヶ月、9ヶ月、12ヶ月の5時点で縦断的調査を行った。調査内容は、生理的評価指標として心拍変動R-R間隔周波数解析(HF/LF)、尿中カテコールアミン3分画,コルチゾールを計測し、心理的評価指標として精神健康調査票(GHQ28)、エジンバラ産後うつ自己評価表(EPDS)を用いた。 結果及び考察 平均年齢は31.2歳、初産31名、経産26名であった。各指標において初経産による有意な差は無かった。産後1ヶ月、4ヶ月、9ヶ月、12ヶ月におけるLF/HF値は有意な差はなく、尿中カテコールアミン3分画値コルチゾール値も有意な差はないものの正常値よりも高い傾向を認めた。GHQ28得点は、産後1週(5.0±4.4)よりも1ヶ月(6.9±4.8)で有意に高くなり(p<0.01)、4ヶ月(4.9±4.7)、12ヶ月(4.6±3.8)では有意に低くなった(p<0.01).EPDS得点は産後1週(4.3±3.8),1ヶ月(4.5±4.4)では有意な差はなかったが、4ヶ月(2.8±3.3)、9ヶ月(3.3±4.3)、12ヶ月(2.4±2.6)では有意に低くなった(p<0.05)。なお、生理的及び心理的指標間の相関はなかった。これらのことから生理的指標である尿中カテコールアミン3分画コルチゾール値は、継続して高い水準にあると推察される。心理的指標では、産後1ヶ月が心理的に最もストレスフルであるが,4ヶ月で落ち着きを見せ、12ヶ月では安定することがわかった。以上により、継続的な身体面へのケアの必要性、産後1週の心理的指標によるスクリーニングの有効性、及び1ヶ月までの心理面へのケアを含めたコーチング・プログラムの方向性を示した。
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