国内において産痛の受容と克服(通過)に関しての実態を明らかにし、効果的なコミュニケーションを含むケアについて考察することを目的とし、23年度は産婦へのアンケート調査と産痛によりパニックとなった事例に関して助産師から聞き取り調査を行った。 (1)硬膜外麻酔分娩と自然分娩の両方を扱う3施設の産婦人科医院において、母児ともに正常に経過した初産婦に産褥3日目~6日に質問紙調査を実施した。有効回答数は204人であった。主な調査内容は年齢、学歴、妊娠週数、児の出生時体重、出産方法、10段階のビジュアルスケールを使用し、妊娠期に想像していた産痛の度合いと実際に経験した産痛の度合い、出産についての総合的な満足感、達成感、希望する次回の出産方法等である。結論として麻酔分娩は産婦の主体性や達成感を損なうものと認識される傾向にあるが、「自然出産した初産婦」と「硬膜外麻酔を使用して出産した初産婦」との間には、出産に向かう主体性や達成感には有意の差が見られなかった。また総合的な満足感においても有意な差はなかった。今後も助産師は、産婦の力を引き出し、自然出産に挑めるようなケアを高めていくと同時に、一方では麻酔分娩を希望する女性への理解とケアも深めていく必要があることが示唆された。 (2)産痛によるパニック事例から見る産婦の変化と産婦とのコミュニケーションに関して助産師に体験事例について聞き取り調査を行った。助産師がパニックに陥っている産婦と判断する客観的事実の要素を抽出した。また、パニック状態の産婦に対応する助産師自身も、ややパニック傾向になっている状況があることが分かった。成功例としてのコミュニケーション含めたケアについても整理し考察することができた。産痛によるパニックの症例は少数だが、自然分娩から帝王切開に移行する場合もあり、また出産に関して失敗感を持つ女性も存在し、そのケアは重要である。ケア側の対応姿勢を調査し今後の看護援助に示唆を得たことは意義あると考える。
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