研究概要 |
出産の医療化が進み、少産化の今日だからこそ、女性が親となるためには,その母親との関係の見直しが重要で、その人自身の生い立ち~妊娠・出産・産褥期・生後数か月までの連続した経験の影響は大きく、それには一定の環境,一定の種類の継続的サポートが必要であると言われている。そこで、3世代に渡る出産環境の変化と「親となること」に対する今日の妊娠女性のニーズ調査を目的に、今年度は、継続ケアが実践されている助産所やかつて存在していた母子健康センター、女性に優しい出産をモットーにしている診療所で出産した女性らを中心に3世代に渡る女性の出産体験の聞き取り調査を行った。第1世代6名、第2世代12名、第3世代11名の29名である。現在、質的に分析中であるが、現時点での成果は以下の通りである。第1世代は産むことは生活の一環であり、生活そのものの厳しさが勝っていた、妊娠、出産、子育ては、女の役割と受け止めており、家族の複雑さは嫁姑関係に影響しているが、みんなに子育てしてもらったと感謝の念もある。しかし、これらの体験や捉え方は生活の大きな変化や出産の施設化で、次世代には伝承されてはいなかった。第2世代の出産場所は、助産院、母子健康センター、病院であった。助産院や母子健康センターでの満足度は高く、助産師との関わりの中で、出産とは自分と向き合う体験だったと語っているが、病院体験者は、男性産科医に対して、辛かった、人として扱われた体験がないと語っていた。第3世代の都市部の女性は助産院や出産ケアの評判の高いところを出産場所として選択していたが、地方ではその選択の余地すらなく、自宅とは離れた出産場所となっていた。しかし、産む人が少ないから仕方がないと現状を受け入れざるを得ない状況に置かれていた。次年度の計画は、これらの詳細な分析結果を公表することと、分析結果を元にアンケート用紙を作成し、調査を実施する予定である。
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