研究概要 |
かつて自然な環境で子産み子育てをした世代は,自分たちの体験をどのように次世代に伝承し,次世代のためにどんな環境を望んでいるのか、一方、若い女性たちは出産環境や「親となること」をどのように受け止め、何を望んでいるのかを明らかにする必要がある。 そこで、3世代に渡る出産環境の変化と「親となること」に対する今日の妊娠女性のニーズ調査を目的に、1年目は継続ケアが実践されている助産所やかつて存在していた母子健康センター、女性に優しい出産をモットーにしている診療所で出産した女性らを中心に3世代に渡る女性の出産体験等に関する聞き取り調査を行った。 2年目となる今年度はインタビュー・データの分析と平行しながら、女性に優しい出産をモットーにした診療所での8年間6100件のデータ分析を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。助産師が主体で携わる出産の85%には医療介入の必要はなかった(帝王切開率9.4%、吸引分娩率0.8%、陣痛進剤使用率3.6%)。分娩所要時間は平均的な分娩所要時間と比べて第1期が短く、第2期が長かった。会陰切開を必要とする出産も1.7%と非常に少ない結果であった。これらは助産師が主体で行う出産ケアの安全性を立証する結果となったと考える。 また、今年度は都市部と地方における3世代(第1世代:1945年以前生まれ、第2世代:1946~1970年代生まれ、第3世代:1971~1990年生まれ)の合計1000名を対象にしたアンケート用紙を作成した。1年目の研究結果から、調査地域を産科医師数の少ない地方の道府県に広げた方が良いと考え、当初計画よりも地域数を拡大し、調査方法もインターネットによる調査に切り替えた。3月末での調査終了の計画で、インターネット会社との間でネット上のアンケート画面作成を行った。 しかし、調査を実施する直前で、東北地方太平洋沖地震が発生した。地震による影響地域が東北・関東地方と広範囲であったこと、調査内容が妊娠出産や子育てに関する内容であったことから、全国的に日常生活が落ち着いた段階での実施に変更を余儀なくされ、補助金事業の8か月間の延長の許可を得て、平成23年11月に調査を終了した。
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