研究概要 |
本研究では,増え続ける産科医療訴訟や深刻化する産科医不足の背景にあって,産科医療の危機的状況を打開する一つの重要な糸口である出産に対するイメージ形成過程に着目し,これを,出産を取り巻く医療や社会の状況と関連づけて分析し,体系づけることを目的とする。 平成21年度は、日本の出産環境が大きく変化した過去60年間に焦点を当て,出産に対するイメージやイメージ形成過程に関連するテクストを収集・分析して,出産のイメージを描写する言説の特定化と諸言説の背後にある社会文化的実践を示すテクストのカテゴリー化を図った。平成22年度は、平成21年度の調査で明らかにされた事柄のうち,特に注目すべき時代や現象に関与する出産経験者,医療従事者を対象に聞き取り調査を行った。調査の実施に先立ち,日本赤十字看護大学研究倫理審査委員会から承認を得た。 調査では、出産経験者3名、医療従事者5名(助産師3名、産科医師2名)、計8名からデータを収集した。医療従事者・出産経験者が語った出産に対するイメージは、【作られる自然-医療介入が出産を守る】、【女性の中に眠る自然-成せばなる、成さねばならぬ自然性】、【天為としての自然】、【不安の再生産装置】、【職種間葛藤の舞台裏】、【人々の間で育まれる自然-信頼関係で切り抜ける】の6つのカテゴリーに類型化された。平成23年度は、文献調査(平成21年度)と聞き取り調査(平成22年度)の結果を統合して、広範な社会的文脈における出産に対するイメージとその形成過程を分析し、体系づける。
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