研究概要 |
本研究の目的は,乳幼児の虐待事例・虐待リスク事例における父親の特性と心理社会的要因について明らかにすることである。平成21年度は,1.子ども虐待における父親のリスク要因に関する研究を把握し,今後の子ども虐待における父親の特性に関する研究,実践上の課題を明らかにするために,国内外の文献検討を行った。その結果の一部については,日本子ども虐待防止学会第15回学術集会で発表した。文献検討を行い文献レビューした結果,研究論文数,研究方法,研究結果において国内外では違いがみられた。子ども虐待の父親のリスク要因として,国内文献では,父親の育児非協力など家族の問題として捉えられていた。国外文献では,雇用・経済状況,人種,父親代理の存在等の父親自身の属性,父親自身の感情,態度,行動に関する心理社会的要因等が明らかになっていた。子ども虐待が社会問題として取り組まれてきた背景の違い,家族背景の違いが考えられた。2.北海道内の保健所管内で,児童福祉施設や医療福祉サービス等社会資源が比較的整備されている1つの地域を特定し,協力が得られる行政機関に依頼し,研究課題に関する情報収集,学習の機会とするため,子育て支援に関する事例検討会に出席した。また,虐待事例への支援を現在実施している熟練保健師に対するインタビュー内容を検討し,インタビューガイドを作成した。3. 2.と同じ地域の行政機関に所属する熟練保健師9名への1回目のインタビューを実施した。インタビューデータについては,現在分析中である。本研究結果は,乳幼児の虐待事例における父親の特性について明らかにすることにより,父親のリスクアセスメントにつながる。さらに、事例への具体的支援の検討を図る基礎資料となり,子ども虐待の予防活動に意義がある。
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