1.地域においては、深刻な悩みを抱えながらも他者への援助を求めない住民が潜在していると考えられる。援助要請行動に影響する要因として、ポジティブな結果としての利益と、ネガティブな結果であるコストが存在し、これらの予期が相談行動生起に影響することが示唆されている。そこで30-69歳の一般住民を対象としたアンケート調査を行い、メンタルヘルスに関連する要因を個人の相談行動に対する態度を含めて分析した(分析対象数:945)。メンタルヘルスの評価指標はGHQ-12を用い、GHQ得点を従属変数、独立変数には、相談行動の利益・コストの下位尺度、認知的ソーシャル・キャピタル、Sense of Coherence(SOC;首尾一貫感覚)、ソーシャルサポート、婚姻状態など12項目を投入し、年齢を調整したステップワイズ重回帰分析を行った。その結果、メンタルヘルスには、男女共、SOC、相談することでの自己評価の低下、健康状態、経済状態が関連しており、女性ではこれら3要因に加え、ソーシャルサポートが有意な関連要因として選択された。他者へ相談することによる自己評価の低下は相談行動の抑制要因と考えられ、この態度は男性や30歳代で強かった。個人レベルの認知的ソーシャル・キャピタルは、単変量解析でのみGHQ得点に有意に関連していた。 2.自殺予防事業をすすめている東北内陸部の一自治体において、職員を対象として行った質問紙調査結果から、メンタルヘルスと職業性ストレス、生活状況の関連を分析した。性・年齢を調整した多重ロジスティック回帰分析の結果、精神的ストレスには、努力/報酬不均衡と仕事上のストレスがよくあることが有意に関連する要因として選択された。調査結果は報告書として対象となった自治体、保健師に報告すると共に、職域における精神的健康増進の対策を検討した。
|