本研究の目的は、知的発達障害児とその家族を支援する地域の力、コミュニティレジリエンスを育成し、そのプロセスと促進する要因を検討することである。研究方法はA町をフィールドにCommunity-based Participatory Research (CBPR)を用いて、平成21年から24年度の4年間を計画している。平成21年度は、コミュニティミーティングの開催準備のため、(1) 研究者による母子保健統計資料分析による地域の発達障害児支援の課題の抽出、(2) CBPRについての文献検討をもとに、研究者と発達障害児に関わる地域専門スタッフの皆でCBPRについての共通理解を深め、協働関係の構築に取り組んだ。 その結果において次の3点が挙げられた。(1) 平成17年~21年の5年間の「二次療育教室」に参加した5歳児は24名であり、対象児の8.3%であった。また24名の内訳は、1歳6か月児健康診査で早期発見された児が18名(75%)、3歳児健康診査で発見された児が4名(16.7%)であった。乳幼児健康診査が発達障害児の早期発見・早期療育において重要な役割を果たしていることが明らかになった。(2) 発達障害児地域支援システムの歴史的変遷を捉えると、発達障害児の家族が、障害から派生する生活の問題を各関係機関に発信することで、発達障害児の地域支援システムが発展していた。この発信する家族の力は、1歳6か月児健康診査後の「一次療育教室」や「二次療育教室」における家族同士のつながりをつくる取り組みにより形成されていることが明らかになった。(3) 今後の課題として、地域支援システムのサービスの受け手である知的発達障害児とその家族、及び障害児保育に関わる保育士、特別支援教育に関わる小学校教諭からのデータを収集し、地域の課題を明らかにして、コミュニティミーティングで話し合うことが求められている。(現在、発達障害研究投稿中)
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